第5編 高分子化合物

第1章 高分子化合物の性質

1高分子化合物の構造と性質

 

 高分子化合物の構造と性質

高分子化合物とその分類】

一般に,分子量が約10000を超える物質を高分子化合物という。高分子化合物には,炭素原子が中心になった〔 有機 〕高分子化合物とケイ素原子と酸素原子が多数結びついた〔 無機 〕高分子化合物とがある。高分子化合物のうち,デンプン,タンパク質,のように自然界から得られるものを〔 天然 〕高分子化合物,ポリ塩化ビニル,ナイロン,のように石油からつくられるものを〔 合成 〕高分子化合物という。

 

【高分子化合物の構造】

単量体(モノマー)が互いに結合して重合体(ポリマー)ができる反応を〔 重合 〕といい,重合体を構成する単量体の繰りかえし数を〔 重合度 〕という。また,2種以上の単量体が重合することを〔 共重合 〕といい,生じる高分子を共重合体という。高分子化合物の構造は,鎖状構造を基本とし,それに枝分かれ構造や立体網目構造などが加わったものがある。

 

【高分子化合物が生成する反応】

@付加重合   

エチレンや塩化ビニルのように不飽和化合物(炭素間の二重結合や三重結合を持つ化合物)の不飽和結合が,連続的に付加反応を繰り返しながら重合することを〔 付加重合 〕といい,生じた高分子を付加重合体という。

例)プロピレンの付加重合

 
 

A縮合重合

2つの単量体分子間から水のような簡単な分子がとれる反応を〔 縮合 〕という。縮合を繰り返しながら重合することを縮合重合といい,生じた高分子を縮合重合体という。

例)ポリエチレンテレフタラート

 
 

【高分子化合物の特徴】

 一般に,高分子化合物は固体であるが,〔 結晶 〕構造の部分と〔 非結晶 〕構造の部分が共存する。結晶構造は,高分子化合物に圧力を加えて配列させたり,水素結合をさせたりすることで結晶構造を形成させることができる。結晶構造部分が多いと強度が増し,非結晶部分が多いと柔軟性,透明度が増す。また,〔 ゴム 〕のように非結晶だけの物質を〔 アモルファス 〕という。

 〔 タンパク質 〕や,〔 核酸 〕のように単量体の配列が決まっているものもあるが,ひとかたまりの高分子化合物は重合度(nの値)の異なるものが混ざって存在している。そのため高分子化合物の分子量は〔 平均分子量 〕として表される。このことと非結晶構造の存在から,高分子化合物は一定の融点をもたず,ある一定の温度で柔らかくなるものが多い。この温度を〔 軟化点 〕という。

 高分子化合物は一般に溶媒 に溶けにくく,適当な溶媒に溶解する場合は〔 コロイド 〕溶液になる。